2017年03月27日

ぼくはネコなのだ(23)

「兄貴はどこに行ったんだろう」
 ぼくはニャーニャー鳴いてみたが、一向に返事がない。心配になってあたりを探してみることにした。もしかして、「ネコのいい」兄貴のことだから、えさにつられて悪い奴のわなにでも引っかかったんじゃないか。
 探し回っているうちに、自分がどこにいるのか分からなくなった。草むらの中で周りが見えない。子供の声も聞こえない。そのうち、雨が降り出した。しかも、大粒の雨である。おてんとうさまはどこへ行ったんだろう。ちょっと待って下さいと言ったが、ますます降り方は激しくなる。冷たくて体がふるえる。目の中に雨が入って、よく見えなくなった。
 何とかうちにたどり着いたときには、すっかり「ぬれネコ」になっていた。駐車場には髪の短いおじさんが立っていた。うれしくなって駆け寄ると、おじさんはすっかりぬれたぼくを玄関まで抱いていき、乾いたタオルでふいてくれた。そこにはすでに、毛をふいてもらった兄貴もいた。二匹だけになったとき、兄貴がぼくに向かって言った。
「あのおじさん、おまえのこと探して、雨の中、ずっと歩き回っていたんだぞ」(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:41| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする