2017年03月02日

ぼくはネコなのだ(18)

 そのとき、玄関からおばさんが飛び出してきた。兄貴が極ネコに殴られ続けているので、やめさせようとしたが、取っ組み合いは止まりそうもない。
「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」
 叫び声を上げると、うちの中から髪の短いおじさんが出てきた。でも、何もしないで突っ立っている。今度はおばさんが怒り出して、「もう、ほんとに!」と言いながら、そうじのホウキを手にとって、極ネコの背中をたたいた。極ネコが逃げ出すと、おじさんが母ちゃんの方を追ったので、二匹とも大あわてで庭から通りに出ていった。
 その間、ぼくはこぼれたえさを食べ続けていた。だって、ほんとにお腹がすいていたんだもん。
 おばさんは空になった皿を手に取ると、うちの中から袋を持ち出してきて、少なくなった分を足してくれた。これで兄貴もようやく、すきっ腹を満たすことができるというわけだ。
 人間も立ち去り、えさも食べてしまうと、兄貴はぼくの顔を見上げて言った。
「あのおばさん、何って言ってたんだ?」
「お兄ちゃんって言ってたよ」
「あの年で兄ちゃんもないもんだ。夫婦じゃなかったんだな、あの二人……」
 ぼくはもう若くない兄と妹、それに母親らしいおばあさんが、どうして同じうちで暮らしているのか分からなかった。
「それで、母ちゃんと極ネコおじさん、どうなるのかな」
「戻ってこないだろ。おばさんはおれたち子ネコを選んだってわけさ」
「何でこうなったのかな?」
「天佑、天の助けっていうやつさ。おてんとうさまが助けてくださったんだよ」
 兄貴にしては、難しいことを言うんだなと感心して、まぶしいお日さまをしばらくおがんでいた。(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:32| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする