2017年03月19日

『続・男はつらいよ』第二作

 山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズの第二作。このシリーズの特徴は、最初に寅次郎が夢を見ること。それが物語の筋と何かしら関わっている。「酔生夢死」を地で行っている渡世人寅次郎の人生を象徴するようだが、夢が現実とずれているところが、またコミカルである。
 今回、寅次郎は生みの母、菊に会いに行き、「金を無心に来たのか」と言われて逆上して飛び出す。ただ、話の中心は英語塾の恩師、坪内先生との再会と、娘の夏子へのほのかな思いである。寅次郎が失恋するのは、このシリーズの既定路線なのだが、それに追い打ちをかけているのが、恩師坪内先生の死である。こんなに泣いてばかりいる寅次郎も珍しい。
 このままでは、悲しくて陰気な話に終わってしまう。それを和らげてくれるのが、寅次郎失恋後の後日譚である。生みの母にすげなくされ、恩師の死と失恋に傷ついた寅次郎は、突き放した生みの母、菊にもう一度会いに行く。口の悪い者同士本音で話している姿を、新婚旅行中の夏子が見かけるという設定で、陰に傾きすぎた内容に陽の要素を付け加えているのである。


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2017年03月18日

米軍基地の間を抜けて(6)

 沖縄館の中では、琉球王国の歴史が一目で分かるようになっていた。明治の初めに日本に併合される以前は、ハワイ王国のように一つの国だったのだ。江戸時代の初めに、薩摩藩に侵攻される以前は、マレーシアやタイ、インドネシアとの交易で、莫大な利益を得ていたという。
 薩摩による支配が始まると、自由な活動は制限され、二重の重税にあえぐようになった。一方、琉球王国は明や清に朝貢を続けていたから、薩摩藩は琉球を通じた密貿易で、利益を独占する形となった。
 表面的には清の属国で、年号も中国のものを使っていたが、実質的な支配者は薩摩藩だった。明治政府は清との国境を画定するため、琉球王国を琉球藩に格下げし、1879年(明治12)に軍と警察を派遣して、沖縄県を設置したのである。最後の国王尚泰は、東京への移住を命じられた。これが世に言う琉球処分である。清からの抗議を受けたため、宮古・八重山を清に割譲する妥協案も出されたが、妥結を見ぬまま日清戦争に突入し、日本と中国に分割される事態は避けられた。(つづく)

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2017年03月16日

ぼくはネコなのだ(21)

 夏も終わりだった。うるさく鳴いていたセミも、地べたに転がりひっくり返っている。ぼくがちょっかいを出すと、そいつは羽をばたつかせるが、もう飛び上がる元気はない。ぼくはそいつをしばらくこづいて、狩りの練習をする。動きがにぶくなったところで、おやつの代わりに食べてしまう。歯応えばかりで、うちのおじさんがくれる肉棒みたいに、おいしくはないけどね。
 兄貴とぼくは、その日も東側にある高台に、パトロールに出かけていた。草むらを出入りしているうちに、兄貴の姿を見失った。一匹になったので、自分のなわばりを広げるために、少し遠出してみることにした。ぼくを見捨てた母ちゃんのことも気になったし、自分の父親と出会えるかもしれないし。
 歩道から見下ろすと、低くなった広場で、白い服を着た人間の子供たちが、笛の合図ででんぐり返しをしたり、箱に手をつきジャンプしたりしていた。笛を吹いている男の人は、あの子供たちの父親なんだろうか。それにしても、子供たちの運動が下手なのにはあきれた。まっすぐ回転できなかったり、箱の前で急に止まってぶつかり、中には急に泣き出す子供もいる。(つづく)

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