2017年02月17日

ソダーバーグの『ソラリス』

 スタニスワフ・レムの小説を映画化した物としては、アンドレイ・タルコフスキーの『惑星ソラリス』が有名だ。ソラリスという惑星は生命を持っており、接近する人間に幻覚をもたらし、脳裏にある考えを物質化する。そのために、現実と非現実の区別がつかなくなり、どこまでが考えたことで、どこからが行動したことかも分からなくなる。ソラリスをめぐる宇宙論については、原作で最も詳しく語られているし、タルコフスキーの作品でも、それが謎として提示される。一方、スティーブン・ソダーバーグの作品では、それが前提として物語が展開するため、原作を知らないと分かりにくいかもしれない。
 実は、ソダーバーグの『ソラリス』を見たのは二度目である。映像の解像度が高いのは気に入ったが、映像の美しさではタルコフスキーの作品にはかなわない。主人公ケルヴィンの亡き妻との幻想的なダンスなどの見せ場は、ソダーバーグの『ソラリス』にはない。執拗に現れる亡き妻は、付きまとう亡霊そのもので、恐怖映画のようである。原作を単純化し、とにかくシンプルな筋に仕立ててある。タルコフスキーの『惑星ソラリス』を見たレムは、フョードル・ドストエフスキーの『罪と罰』のようだと評した。これは必ずしも酷評ではない。宗教的な罪悪感と許しという要素が加わったわけだから。
 ソダーバーグが描くのは、妻を自殺させた男の妄念ばかりで、そこに甘美な思いが入る隙はない。映画の最後で、ケルヴィンは宇宙船からの脱出を試みるが、地上で指を切った記憶が再現されることから、脱出も幻覚でしかないことが明らかになる。宇宙船がソラリスに突入する寸前、ケルヴィンの前に亡き妻が現れ、すべては許されると告げてキスをする。それは死を意味する。だから、この映画は始めから終わりまで、出口なしの状態の反復で、SF仕立ての恐怖映画というわけである。

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:25| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする