2016年11月06日

「指宿」は「いぶすき」(10)

 バスに乗ってヘルスセンター前で降りた。昼食を食べたあと、玉手箱の湯に向かった。。ふと、右方の海岸に目をやった。何やら奇妙なものが見える。温泉を利用した製塩所跡らしい。塩田には熱湯の下に塩が沈んでいる。温泉そのものが塩分を含むので、製塩には最適だったのだろう。壊れたパイプから湯が噴き出しているさまが、生きた廃墟といった雰囲気を醸し出していた。
 5000年ほど前に池田湖から出た火砕流が、この辺りを焼き尽くしたという。あんなさざ波も立たぬ湖の底にも、灼熱のマグマが眠っていたのかと不思議な気がした。7300年前の鬼界カルデラの巨大噴火で、南九州の縄文人は全滅したと言われるが、その後も小規模なカルデラ噴火は続いていたわけか。崖の下には屋外の砂湯があり、顔だけを出した人々の姿がよく見えた。
 玉手箱の湯に入った。ここは日替わりで、開聞岳が見える湯と竹山が見える湯を、男女で交換していた。奇数日だったので、竹山の方でがっかりした。竹山も火山が生んだ奇景で、天に突きだした急峻な地形で、かつては山伏が修行をしていたという。
 浴槽から出た所で海側に出ると、左方に開聞岳が望めた。山裾がそのまま海に続いている。目の前で錦江湾も眺められ、雄大で息を呑んだ。温泉を出たところで、小雨が降ってきた。
 帰路は指宿枕崎線の各駅停車に乗った。気動車で音を立ててよく揺れる。一時間半近くかかるらしい。その夜は鹿児島のホテルに泊まることになっていたが、今回の旅はほぼ終わったようなものだった。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!



posted by 高野敦志 at 02:41| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする