2016年10月21日

「指宿」は「いぶすき」(6)

 快晴だったが、日が傾いてきたから、空の青は幾分あせている。立ち止まっていると、風が冷たくなった。波は穏やかだが、両側から打ち寄せてくるので緊張する。数時間前まで海底だった所は、砂が黒く湿っていて固い。
 この風景は北斎の『冨嶽三十六景』で見た江ノ島に似ている。江戸時代は橋がなかったから、参詣する客は今日のように、砂州の上を歩いていったのだ。当時は埋め立てた平地もなかったが、三重塔が建っていた。江ノ島は神社ではなく、弁財天を祀る岩本院という寺院だった。
 知林ヶ島の頂には東屋も見える。ただ、現在はそこまで登る道が崩れ、通行できなくなっている。島の岸辺に渡ったところで一休みした。満潮までもう時間がなかった。砂州をたどって岬まで戻っていくのだが、行きに見たときよりも、砂の幅は狭くなっている。しかも歩き疲れたせいで、行きよりも遠い気がした。(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:37| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする