2016年02月29日

トンジュク(入魂)

 途絶えたはずの秘法を求めて、私はカイラス山の麓にある堂を訪ねた。日焼けした初老の行者に話しかけたとき、死んだばかりの女が運び込まれた。行者が祈祷を始めると、私の魂が引き寄せられて、民族衣装を着ている自分を発見した。
 運び込んだ夫は私を妻だと思って抱き寄せた。私は夫を押し返して、行者に早く女の体から出すように頼んだ。
「これは単なる催眠術ですよ。ほら、女はここに倒れてるじゃないですか」
「そんな口きいていいのか。私に助けを求めてきたはずだろ?」
 堂の外に出ると、何と私が地べたに倒れていた。行者が陀羅尼を唱えると、私は元の体に戻ることができた。そこには行者も堂もなく、目をあざむく青い湖が広がっていた。


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2016年02月28日

『電子本(電子書籍)を作ろう!』のテンプレート

『電子本(電子書籍)を作ろう!』で紹介したePubのテンプレートをアップロードします。空の一太郎ファイルですので、ご自由にお使い下さい。
http://takanoatsushi.up.seesaa.net/image/template.jtd

 ePubの場合は、目次のページ数などを調整して下さい。pdfの場合は表紙のページを設定し、表紙の画像を貼り付けます。目次と表紙の設定は、「ファイル」「文書スタイル」「スタイル」「ページ/ページ・フッタ」とたどり、「ページ番号詳細」で行います。


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2016年02月27日

ラサから西安へ(4)

 朝食を食べてホテルをチェックアウトした。最初に殷さんが案内してくれたのは、大慈恩寺境内にある大雁塔である。これは唐代に建てられた七層の四角い段状の塔で、高さは六四メートルもある。玄奘三蔵が天竺から持ち帰った仏像や経典を収めるために、皇帝の高宗に建立を願い出たとされる。その右に建つ鐘楼や、左に建つ鼓楼は、明の時代に建てられたものである。
 そんな昔に、よくもこれほど高い塔を建てられたものだと思った。しかも煉瓦造りだというから、日本の五重塔のような美しさはないけれども、存在感の大きさでははるかにまさる。ピサの斜塔と違って傾いてはおらず、長い歳月倒れずに建っていたのが奇蹟のようだ。科挙に受かった者は、それを祝して登ったらしい。慈覚大師円仁も、天台宗や密教を学びに渡唐した際に登ったという。
 大雁塔には名の由来がある。当時、小乗仏教の僧侶は肉食をしていた。ちょうどその日は精進で肉が食べられなかった。そこで空に向かって仏に、どうか私たちのことを忘れないで下さいと祈ったところ、飛んでいた雁の一羽が落ちてきて死んだ。菩薩の化身に違いないとして、雁を埋葬した地に建てられた仏塔を、大雁塔と呼ぶようになったという。(つづく)


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