2019年11月19日

沈みゆく野付半島(6)

 男性は根室半島の方を回ってきたらしい。相棒が仕事で来られないので、一人旅をしていると話していた。
「今夜は屈斜路に泊まるんですよ」と友人が答えた。一人旅だと無性に人と話がしたくなるという気持ちはよく分かる。若い頃の僕は、知らない人と話をするために、ユースホステルに泊まったものだから。
 男性が去ったところで、ネイチャーセンターの二階に行き、展示された資料を見て唖然とした。一九七〇年頃のトドワラは、かつて僕が見たとき以上に、トドマツの根が密集するように転がっていた。それが今ではほとんど消えてしまった。野付半島は百二十年後には、地盤沈下で水没してしまうというのだ。
 幕末の頃の野付半島の絵図を見ると、野付湾が海跡湖のように、砂州で囲まれており、今は海となっている辺りも、徒歩で行き来できたことを知った。水没するというのも、あながち誇張ではない気がした。百二十年という時をさかのぼれば、祖母が生まれた頃になるが、地質学的にはごく短い時間である。死んでいくのは、トドワラやナラワラだけではなく、野付半島そのものだったのだ。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 01:53| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「男はつらいよ」おぼえがき(ePub)

 山田洋次監督の『男はつらいよ』のシリーズは、葛飾柴又を舞台にテキ屋稼業で全国を旅した車寅次郎を描き、国民的な人気を博した映画です。これは『男はつらいよ』の全作品を鑑賞した「おぼえがき」に過ぎませんが、旅した土地やヒロインについて感じたこと、思い浮かんだことをまとめてみました。制作された全作品を年代順に並べ、目次から見たいページに移動できます。
 以下のリンクからダウンロードしてください。4.5メガありますので、環境によっては多少時間がかかります。 
oboegaki.epub

 iTunesからダウンロードする場合は、ミュージック→iTunes→iTunes Music→podcasts→当該のフォルダの下に、ファイルが入ります。
 IEでダウンロードした場合は、拡張子をzipからepubに変えて、下記のアプリでご覧下さい。

 ePubはiOSのiPadやiPhoneなどで読むのに適した形式です。iBooksなどでご覧下さい。Windowsでは紀伊國屋書店のKinoppy(http://k-kinoppy.jp/for-windowsdt.html)が、最も美しくePubのファイルを表示します。

 ブラウザからePubを開く場合、Edgeならプラグインなしで読めます。Googleのchrome(https://www.google.co.jp/chrome/browser/desktop/index.html)なら、プラグインのReadium(http://readium.org/)をインストールして下さい。
 firefox(https://www.mozilla.org/ja/firefox/new/)にもプラグインのEPUBReader(https://addons.mozilla.org/ja/firefox/addon/epubreader/)があり、縦書きやルビなどにも対応しています。

 なお、パソコンのiTunesで「購読」したり、iOSのアプリpodcast(https://itunes.apple.com/jp/app/podcast/id525463029?mt=8)でマイpodcastに登録すれば、確実に新しいエピソードが入手できます。

追伸

 当初の誤植は訂正してあります。すでにダウンロードされている方は、差し替えていただけると幸甚です。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 01:34| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月18日

岡田惠和の少年寅次郎(5)

 昭和二十四年、寅次郎は十三歳になっている。やはり、昭和十一年生まれということか。坪内夏子が父散歩と喧嘩して、くるまやを訪ねてくる。交際相手のことで父に反対されたからで、寅次郎が片思いのままであることに変わりない。
 寅次郎の継母光子は、ずっと腰痛に悩まされていたが、膵臓癌のためであったことが分かる。光子には癌であることは伏せられているのに、泥酔した平造が病院に入り込んで、「死ぬはずない」と大声で叫ぶことで、光子自身に不治の病であることを知らせてしまう。
 結局、光子は帰らぬ人となるのだが、真実から逃げ回る平造は家に戻らず、葬儀も弟竜造・つね夫婦が中心となり、喪主が寅次郎という形で行われる。平造が戻ってきたときには、光子の葬儀はすでに終わっている。
 妻が亡くなったことを認めたくない平造は、またもや寅次郎につらく当たる。二人は似た者同士の近親憎悪の仲であり、光子がいなければ死んでいたんだから、光子に感謝しろと言う平造を、寅次郎は殴り倒して、ついに二十年間戻らぬ長い旅に出るのである。
 さくらが柴又駅まで送りに行き、財布からお札を出して兄寅次郎に渡すところは、『男はつらいよ』で毎度目にする別れの場面である。全五回のテレビドラマは、こうして幕を閉じたのである。
 あとは、山田洋次監督自身による映画化が望まれるわけだが、ドラマと違って、一時間半から長くても三時間の枠に収めるには、原作『悪童』のある時期にしぼった映像化しかないだろう。もし映画化されるなら、寅次郎出奔の経緯に焦点を絞った形で、山田監督の映像世界を見てみたい。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 01:05| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする