2019年04月25日

洞爺湖に幻の霊山現る(8)

 確かにその点では優しいのだが、有珠山は江戸時代に爆発的な噴火を繰り返し、山体崩壊も引き起こしており、太平洋に達するほどの火砕流や火砕サージも噴出する。また、山頂以外に山腹や麓から、新たな火口を作って噴火する。恐ろしい側面を持っている点で、危険な火山であることには違いない。昭和新山も有珠山の噴火活動で畑が隆起した物であり、2000年の噴火でも国道脇に火口ができて、そのまま隆起して小山となり、新たな道路を建設せざるを得なくなった。
 13分ほどの上映時間が終わった。映写室の周囲の展示を見て回ったが、35年前のバーチャル噴火体験の施設が、火山弾よけの屋根付きで再現されていた。これは1977年の噴火を体験させるもので、いったんは収束したかに見えた噴火が、土砂降りの降る中で再び始まり、火山雷を伴う噴煙とともに、火山弾が降りそそぐさまが、床からの震動と、屋根に落ちる小石や岩の音でリアルに表現されていた。翌年には泥流が発生し、犠牲者を数名出してしまった。
 バスの時間まで余裕があったので、2000年に噴火した金比羅山の火口を見ようと、友人が言い出した。距離的にはそんなに遠くない。ただ、雪がかなり積もっていたので、手前までしか行けなかった。雪のない季節なら、正面の団地跡の裏手に回り、かつての火口も覗くことができたのだが。洞爺湖の方を見ると、羊蹄山の山腹に雲がかかっていた。幻のような偉容は、すでに霞んできていた。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 02:29| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

小説「漁火」(pdf)

 佐渡を旅した青年が、夜の海に浮かぶ漁火を眺めながら夢想する物語です。舟橋聖一顕彰青年文学賞を受賞し、「青空文庫」にも収録されています。表紙と「青空文庫」に書いたあとがきも加えました。パソコンですぐに開けるpdfファイルなので、保存してからご覧下さい。特にfirefoxの場合、ブラウザのまま開かずに、pdfを保存してからにしてください。Adobe Acrobat Readerの「フルスクリーンモード」だと、バーチャルな書籍がモニターに再現されます。iTunesからダウンロードする場合は、ミュージック→iTunes→iTunes Music→podcasts→当該のフォルダの下に、ファイルが入ります。
isaribi.pdf

 なお、パソコンのiTunesで「購読」したり、iOSのアプリpodcast(https://itunes.apple.com/jp/app/podcast/id525463029?mt=8)でマイpodcastに登録すれば、確実に新しいエピソードが入手できます。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 02:18| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月24日

ぼくがダライラマ?(70)

 侍従に用事を言いつけると、ぼくは牧人に変装して、道案内の従者を引き連れ、ポタラ宮前の石段を下りていった。一歩一歩進むたびに、革靴の跡が雪の上に残されていく。すでに雲が切れてきて、月明かりでラサの町はぼんやり照らされていた。ランプの光が届かぬ先も、雪の道を闇の中から浮かび上がらせる。
 これから何が待ち受けているか。引き返すなら今のうちだ。人影はまばらで、通り過ぎる役人も、ぼくの正体には気づかなかった。石造りの四角い民家は、雪をかぶって丸みを帯びている。振り返ると、マルポリの丘にそびえるポタラ宮は、墨絵のようにぼんやり輪郭が浮かび上がっている。

 いきなり目の前の扉が開いた。勧められるままに入ると、店の中にいた男女が一斉にこちらを向いた。平民の女は化粧などしないものだが、ここにいる女は漢族のように白粉を塗っている。主人らしい目つきの鋭い男に、従者が手を上げて挨拶すると、示された角のテーブルへ進んでいく、石の壁は無造作に積まれており、木の窓枠とのすき間から風が入ってくるが、この席は傍らに炉があって、ヤクの糞を燃やしているから寒くない。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 00:36| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする